吉村昭『羆嵐』新潮文庫(新潮社)

仏像評価 9
通勤中に読むために買ったのだけど、続きが気になって家でも読み続けて読了。
2日間で死者6名、重傷者3名という、大正4年12月に北海道の奥地で起こった日本獣害史上最大の惨事を描いた作品。普通の小説や漫画は読み始めて物語に入り込むまでが疲れるので、買ってもなかなか読めないでいるのですが、本作のようなドキュメンタリーだとサクサク読めます*1
一頭の羆の出現で、一つの集落が放棄され、200名の救援隊が右往左往し警察も役に立たず、騒動を聞いた周辺の町村で避難騒ぎが起きて、ようやく軍の出動が要請されます。しかし軍隊が事件現場に到着するまでには何日もかかり、頼りになるのはたった1人の羆専門の老いた猟師だけ。
読み物として面白いし、人間の滑稽さ(というか愚かさ)や自然の恐ろしさ(やっぱ秋葉原が一番だ)についても考えさせられる一作でした。
でもなんで昭和57年発行の文庫版『羆嵐』が突然近所の書泉に平積みになったのだろうか。これからの時期、羆に警戒せよってことだろうか(笑)?

*1:昔からそうでした。中学生頃までは「〜科学」と歴史・社会ものばかり読んでいた。漫画やライトノベルをバカにしなくなったのが高校生から、小説を読むようになったのは大学生から。